ヴィクトリアシークレットモデルの現在地|歴代エンジェルの光と影
巨大な翼を背負い、ランウェイで眩い笑顔を振りまいた「ヴィクトリアズ・シークレット」の専属モデルたち。かつて世界中の女性の憧れを一身に集めた彼女たち「エンジェル」は、単なるランジェリーの広告塔を超え、ひとつのポップカルチャーの頂点に君臨していました。しかし、時代を象徴したメガブランドの華やかさの裏には、過酷な美の基準や経営危機、そしてブランド自体の失墜という劇的なドラマが隠されていました。
2019年のファッションショー中止から、リブランディングを経て行われた2024年のショー復活、そして多様性が叫ばれる現在に至るまで、ブランドを取り巻く景色は一変しています。この記事では、黄金期を彩った歴代トップモデルたちの驚くべき現在地や過酷を極めたボディメイクの実態、日本人モデル起用にまつわる真相まで、海外ファッションビジネスの深層を取材データとともに紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2018年までの黄金期を牽引したエンジェルたちは、現在実業家や母、ベテランモデルとして多方面で莫大な影響力を維持している。
- 要点2:ショー中止の背景にはルッキズム批判と幹部の不祥事があり、2024年の復活ショーでは伝統の華やかさと現代的ダイバーシティの融合が図られた。
- 要点3:厳格を極めた身長・体脂肪率の基準や極端なダイエット法は過去のものとなり、ブランドの採用方針は包括性重視へと根本的に刷新されている。
【失墜からの再生】ファッションショー中止の背景と2024年の劇的復活
毎年数千万人もの視聴者を釘付けにしてきたヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーが突如として表舞台から姿を消したのは、2019年11月のことでした。中止の引き金となったのは、視聴率の歴史的な低迷だけではありません。当時のマーケティング責任者によるトランスジェンダーやプラスサイズモデルへの差別的発言、さらには親会社幹部と悪名高い投資家ジェフリー・エプスタインとの不透明な関係が露呈し、世界的な激しいバッシングを浴びたためです。「完璧な細さとセクシーさ」を押し付ける旧来の男性目線マーケティングは、Me Too運動以降の世論と完全に乖離していました。
ブランドは存亡の危機に直面し、象徴だった「エンジェル制度」を一度解体。アスリートやアクティビストを起用した「VSコレクティブ」を発足させるなど、大改革を断行しました。そして沈黙を破り、2024年秋に6年ぶりのランウェイショー復活を果たします。ニューヨークで開催されたこの復活ステージには、ケイト・モスやタイラ・バンクスといった伝説のレジェンドから、現代を代表するジジ・ハディッド、さらにはトランスジェンダーモデルやプラスサイズモデルまでが勢揃いしました。かつてのスペクタクルな高揚感を取り戻しつつも、あらゆる女性の身体を祝福する構成へと進化を遂げた瞬間でした。
【歴代エンジェル一覧】一時代を築いたスーパーモデルたちの系譜
ヴィクトリアズ・シークレット専属モデルである「エンジェル」に選ばれることは、モデル界における最高のステータスであり、スーパーモデルへの直通切符でした。歴代の代表的なエンジェルを振り返ると、ファッション史を彩る錚々たる顔ぶれが並びます。
【第1世代〜第2世代:黎明期から世界現象へ】
ステファニー・シーモア、ヘレナ・クリステンセンから始まり、ハイディ・クルム、ジゼル・ブンチェン、そしてアドリアナ・リマやアレッサンドラ・アンブロジオが合流。彼女たちはただ細いだけでなく、ヘルシーで圧倒的なカリスマ性を放ち、ブランドの黄金時代を築き上げました。
【第3世代:SNS時代のアイコンたち】
日本でも社会現象となったミランダ・カーや、驚異的なプロポーションでランウェイの顔となったキャンディス・スワンポール、ドウツェン・クロース、ベハティ・プリンスルーらが牽引。ミランダの甘いドールフェイスと愛らしい笑顔は、日本国内でのブランド知名度を一気に押し上げる最大の原動力となりました。
【第4世代:新世代と多様性の過渡期】
テイラー・ヒル、ステラ・マックスウェル、サラ・サンパイオ、バーバラ・パルヴィンなど、個性豊かな若手が翼を継承。SNS時代のインフルエンサーとしても絶大な発信力を持ち、ブランドが変革を迎える直前までランウェイを華やかに支えました。
【ヴィクトリアシークレットモデルの現在】ミランダ・カーら人気アイコンの転身
エンジェルとして頂点を極めた美女たちは、ランウェイを去った後にどのような道を歩んでいるのでしょうか。そのセカンドキャリアは、華やかな外見以上にタフで知的なビジネスセンスに満ちています。
日本で絶大な人気を誇ったミランダ・カーは、自身が立ち上げたオーガニックコスメブランド「KORA Organics」を世界的な成功へと導き、名実ともに敏腕実業家としての地位を確立しました。スナップチャットCEOのエヴァン・スピーゲルとの間に子どもをもうけ、現在は実業と家庭を両立するライフスタイルアイコンとして同世代女性から支持を集めています。
歴代最長の20年間にわたりエンジェルを務めたアドリアナ・リマは、2018年の引退時に涙のランウェイを見せましたが、2024年の復活ショーで見事な復帰を果たしました。出産に伴う体型変化に対して向けられたネット上の心ない批判に対し、「これが子どもを産んだ40代女性のリアルな姿」と堂々と言い放ち、美の多様性を身をもって体現するパイオニアとしてリスペクトを集めています。
また、抜群のウエストラインで知られたキャンディス・スワンポールは、環境に配慮したサステナブル水着ブランド「Tropic of C」を設立し、環境保護活動家としても発信を継続。ランウェイのトップを走り続けるジジ・ハディッドは、カシミアブランド「Guest in Residence」の創業者兼クリエイティブディレクターとしてモード界の最前線でマルチな才能を発揮しています。
【衝撃の舞台裏】過酷な食事制限ダイエットとモデル体型基準のリアル
ランウェイで完璧な輝きを放つため、モデルたちには常人では耐えられない極限のプレッシャーが課されていました。かつてのモデル体型基準と身長は極めて厳格で、身長177cm以上、ウエスト約60cm、体脂肪率18%以下が暗黙の絶対条件とされていました。
特に物議を醸したのが、ショー直前の過酷な食事制限ダイエットです。アドリアナ・リマが過去のインタビューで明かしたルーティンは世界に衝撃を与えました。「ショーの9日前から固形物を一切断ち、プロテインシェイクのみで過ごす。さらにショー本番の12時間前からは水すら一滴も飲まない」という、ボクサーの過酷な減量並みの脱水メソッドでした。
キャンディス・スワンポールら他のモデルたちも、専属トレーナーをつけて1日2回以上の過密なワークアウトを課し、糖質と脂質を徹底的に削ぎ落とした食生活を強いられていました。こうした非現実的な肉体改造は、モデル自身の摂食障害やメンタルヘルスの悪化を招いただけでなく、一般の若年層にも深刻なボディイメージの歪みを生む要因として、後に強い批判を浴びることとなりました。
【契約年収と引退理由】翼を背負う代償とスーパーリッチの実態
なぜ彼女たちはそこまでしてエンジェルを目指したのか。その最大の理由は、名誉だけでなく天文学的なエンジェル契約年収にありました。ヴィクトリアズ・シークレットの専属契約を結ぶと、年間で数百万円からトップクラスになれば数億円(数百万ドル)規模の専属契約金が支払われました。ジゼル・ブンチェンやアドリアナ・リマが長年フォーブス誌の「世界で最も稼ぐモデルランキング」の常連だったのは、この専属契約がベースにあったからです。
しかし、高額報酬と引き換えに背負う制約は過酷そのものでした。年間を通して徹底したプロポーション維持が義務付けられ、急な海外プロモーションへの参加、さらには他ブランドとの契約制限など、自由を制限される契約条項が少なくありませんでした。
ジゼル・ブンチェンは後に自叙伝で、「下着だけでランウェイを歩くことに次第に違和感を覚えるようになり、精神的な平穏を取り戻すために更新を辞退した」と告白しています。ミランダ・カーもまた、息子の出産と自身のビジネスへの専念を理由に2013年に契約を終了。過密スケジュールと肉体的重圧、そして自分自身のキャリアをコントロールしたいという主体性が、トップモデルたちが翼を下ろした決定的な理由でした。
【日本人モデル起用の真相】歴代の噂とアジア人モデル進出の潮流
「日本人初のヴィクシーモデルは誰になるのか」というトピックは、日本のファッション界で長年熱く議論されてきました。過去には海外コレクションで活躍するTAO(岡本多緒)や冨永愛、あるいはアメリカでも知名度を持つローラなどの名前が候補として噂に上がったことがありました。
しかし結論から言えば、これまでヴィクトリアズ・シークレットの専属エンジェルに抜擢された日本人モデルは一人も存在しません。また、年1回のショーのランウェイを歩いた日本人モデルも歴史上一人も誕生していないのが実情です。
アジア系に目を向けると、中国出身のリウ・ウェン(劉雯)が2009年にアジア人として初めてランウェイに登場し、続いてスイ・ハオ(何穂)やミン・シー(奚夢瑶)が常連として活躍しました。近年は多様化の流れを受け、日本ルーツを持つハーフモデルやアジア系インフルエンサーがキャンペーン広告に起用されるケースは増えています。白人至上主義的なキャスティングから脱却した現在のブランド方針を鑑みれば、近い将来に日本人モデルが主要ビジュアルに抜擢される可能性はかつてないほど高まっています。
【ヴィクトリア シークレット モデル】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:専属モデル「エンジェル」制度は現在も残っているのですか?
A1:かつてのような厳格な「エンジェル専属契約制度」は2021年に正式に廃止されました。現在は固定の専属契約ではなく、多様なバックグラウンドを持つモデル、活動家、アスリートらとプロジェクトごとにパートナーシップを結ぶ柔軟なキャスティング体制に移行しています。
Q2:歴代のヴィクシーモデルで最も成功した人物は誰ですか?
A2:ビジネスと知名度の両面で見ると、ジゼル・ブンチェンとミランダ・カーが突出しています。ジゼルはモデル長者番付で長年トップを独走し、ミランダはコスメブランドの成功により富豪実業家としての地位を確立しました。
Q3:なぜ以前のショーはテレビ放映を中止したのですか?
A3:主な要因は視聴率の急激な下落と、ブランドに対するルッキズム(外見至上主義)批判です。2018年の視聴者数は全盛期の3分の1以下まで落ち込み、トランスジェンダーモデルの起用を拒む幹部発言への反発も重なり、放映権を持つテレビ局側も含めて継続が困難となりました。
まとめ:多様性とファンタジーが交差する新時代のヴィクシー像
かつて「完璧な美」の象徴として世界を席巻したヴィクトリアズ・シークレットのモデルたち。過酷な体重管理と画一的なセクシーさに依存したビジネスモデルは時代の変化とともに終焉を迎えましたが、彼女たちが残したポップカルチャーとしてのインパクトは今なお色褪せていません。
ランウェイを卒業したエンジェルたちは、美貌に甘んじることなくビジネスの世界で新たな道を切り開き、自立した女性像のロールモデルとなっています。そして2024年の復活を経て、ブランド自身も「誰かを排除する美」から「誰もが自分らしく輝く美」へと進化を遂げました。美の定義が絶えずアップデートされる今、ヴィクトリアズ・シークレットとそのモデルたちが発信するメッセージに引き続き注目が集まります。 (出典: ヴィクトリア シークレット モデル(Yahoo!ニュース))